心がざわざわする。
暮らしは便利になった。
欲しいものは大体手に入るようになった。
聴きたい音楽は、家で探して、
家で聴けるようになった。
月にまで行けるようになった。
でも、中学の時に、
CDやさんで「この曲欲しいんです」って言って、
店員さんの前で歌ってみせて、
これですって買わされたものが
全然違った時のなんともいえない感じとか、
好きな男の子のうちに電話する時の、
誰がでるんだろうっていう興奮と緊張感とか、
ああいうのは、もうない。
ネットショッピングは、
子育てしている身にとって本当にありがたい。
なくなると困る。
でも、いつもそこに、
どこか虚しい気持ちがついてまわる。
お店で店員さんと話をして、
これはこういう人がこういう場所で
こういう思い作っていて、って聞くと、
その品物に物語が生まれる。
毎日使いながら、その物語を読んでいる気分になる。
それが、ない。
品物に、温度がない。
温度のない服を着て、
温度のないものを食べて、
そのうち、人の温度もなくなってしまうような日がくるんじゃないか。
いいや、そんなことないよ。と、
隣にある小さな手を触って、温かさを確認する。
それでも、ざわざわする朝。